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野生動物に餌付けをしてはいけない理由 ~バタフライ・エフェクト~

こんにちは、えんじゅです。

先日、散歩に来ているであろうご家族が近所の川にいました。そこに住んでいるヌートリア(大型のネズミの仲間)やハト、カモに餌を与えて、楽しんでいる様子でした。

私はそのご家族に、「野生動物に人間が介入するのは良くないので、餌付けしないでください」とついつい言ってしまいました。そのご家族は何とも分が悪そうな表情で「関係ないじゃないか」とつぶやきました。

そこで私は、楽しい家族のひと時を邪魔してしまい、申し訳ないと思いながらも、「僕らの小さな介入が大きな影響を及ぼすんです。バタフライ・エフェクトという言葉を後で調べてみてください」とだけ言ってその場を去りました。

ということで今回は「小さな介入が大きな影響を及ぼす」についてです。

自然のバランスを崩した二つの問題点

1990年代後半、私は自然保護活動のボランティアをしていました。

主な活動内容は「野生動物の保護・調査」、「植林」、そして「啓蒙・教育」です。

この時に、とても難しい局面を目の当たりにしました。それは、経済社会や、個人レベルまで影響していた「崩れた自然のバランス」でした。
いや、正確には「自然への崩れた意識」でした。

問題点は二つ。

一つ目は、「人間が自然に介入しなくなったこと」
二つ目は、「人間が自然に介入し過ぎること」

一見すると矛盾する二つですが、当時の私は「矛盾しているからこそ問題なのだ」と感じたのです。

人間が自然に介入しなくなった

人間は古くから、自然と共に生きてきました。自然から恵みをいただく代わりに、「恵みがいただける状態を維持する」ということです。

「木を伐ったら、木を植えて、木を育てる、環境を維持する」ということです。昔はそんな「育てる、維持する」というところまでが仕事でした。

日本の山々は広葉樹林が主でした。広葉樹は、動物の餌となる実や葉を多く付けます。落ち葉は腐葉土となり、枯れ木の隙間から入る日光と混ざりあって、良い土となります。動物たちは移動して種を運び、森は少しずつ大きくなって行くことで、その多様性を保ち、奪い合いを減らすのです。

そんな資源である森を維持するために、「木を伐って、環境を維持する」ということを太古から行ってきた人間は、ここにきてその行いを止めてしまいました。

今は、「木を伐って、木を植える」、もしくは、「木を伐る」で完結している仕事が多く、その次の環境を維持するところまで意識が届いていないのが実状です。

さて、自然との共生が急になくなってしまった日本の山は、実はかなり荒れています。成長が早いクマザサや針葉樹などは、葉を密に拡げて落葉もしません。地面に木洩れ陽を作らないので、のんびり育つ広葉樹たちの育成を妨げてしまいます。

これが、「人間が自然に介入しなくなったこと」による一つ目の問題です。

人間が自然に介入し過ぎる

高度経済成長の際、建材需要の増加に伴い大量の針葉樹が植えられました。その一部は、慈善活動の一環としての植林とされましたが、その結果、スギ花粉症が社会問題となりました。

木に与える影響が自分に返って来ていることを知ってか知らずか、人の思考は「では、花粉の出ない木を開発して植えればいい」という方向で、またまた植林をするのでした。

しかし、問題は花粉症だけではなく、他のところにも出ています。

野生動物たちは広葉樹林に生息していますが、それらが植林地帯や、植林するための道路によって分断され、その生息域に人里を入れなければならなくなりました。

山と人のバランスが崩れた状態では、野生動物の個体数バランスも大きく崩れます。

例えば千葉県ではシカはがどんどん増え続けているのが現況です。適正の10倍前後が生息していて、年間4,000頭以上の捕獲を行っています。しかし、それでもなお増え続けているので、捕獲の数をさらに増やさなければ追い付かないのです。

また、野生動物への餌付けも各地で問題となっています。例えば、水鳥に餌付けをすることで、分布域や渡りの行動に変化が起こっています。給餌に頼って、渡りをしなくなってしまったケースも増えてきています。

そして、渡らなくなった結果、その地域では特定の種が増え、他の種が影響を受けて、追いやられる種が出てきます。そして、今まで渡っていた先では、その逆の崩れが出ているのです。

また、餌付けの食べ残しや、大量の水鳥の糞は、水を富栄養化させてしまいます。そうなると、水質は濁り、臭いが悪くなり、アオコと呼ばれる藻を大量に発生させます。

そんな水たちは、浄水場に通って飲み水になったり、用水路に流れて田畑に利用したり、海に流れて魚の口に入ったりして、巡り巡って私たちの口に入って来ています。

バタフライ・エフェクト

自然現象は時間が流れていくと、その状態を変化させます。

自然の法則をニュートン力学やカオス理論などは説明していますが、その計算の過程で、初期状態のものが時間の経過に伴って予測不可能な値まで変化する可能性を示しているものが「バタフライ・エフェクト」です。

このコロナ騒動の中で、指数関数という言葉を聞いたこともあるかと思います。ある一定の増加率が倍々に膨れ上がった時に、急激な増加を見せるグラフ。この指数関数による増加率が「初期状態のものが予測不可能な値まで変化する」というものです。

そんな、「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こす」それくらい小さな要因が大きな影響にまで大きくなっていく、とする説が「バタフライ・エフェクト」なのです。

自然とリンクし続ける

どのような状態にも、原初には目に見えないほどの小さな原因が起因となっているのです。

日本では「風が吹いたら桶屋が儲かる」や、「わらしべ長者」といった言葉も、この「バタフライ・エフェクト」のひとつですね。

さて、ここで自然の話に戻りますが、遊牧民がなぜ遊牧するかと言うと、「その土地の牧草を食いつぶさないため」なのです。「牧草がなくなってから移動する」、では将来的に環境が荒廃して、牧畜が出来なくなることを理解しているからです。

余談ですが、遊牧民族のIQは、我々都会に住む人間よりも遥かに高いというのは面白いデータです。

ともかく、今の日本には「木こり」「またぎ」という仕事が少なくなっています。山を生かすために木を伐り、獣を狩る。また、木を伐り、獣を狩ることで山を生かす。

杉の木25本分の1年間の出す酸素量は、成人2~3人分というデータがあるように、私たちは全て地球とリンクしています。

自分たちからこのリンクを外すような行いは、そのサイクルから外れるということ。何も考えずに起こしているその行動が、バタフライ・エフェクトとなって自分たちに現象を起こしているということを想像し、日常の物の買い方、使い方、消費の仕方を注意深く見る必要があります。

最後に、ネイティブ・アメリカン シアトル首長の言葉を載せておきます。何か感じるものを受け取ってください。

米大統領に送られたシアトル首長の手紙より(一部)

ワシントンの大首長が
土地を買いたいといってきた。

どうしたら
空が買えるというのだろう?
そして 大地を。
わたしには わからない。
風の匂いや 水のきらめきを
あなたはいったい
どうやって買おうというのだろう?

すべて この地上にあるものは
わたしたちにとって 神聖なもの。
松の葉のいっぽん いっぽん
岸辺の砂の ひとつぶ ひとつぶ
深い森を満たす霧や
草原になびく草の葉
葉かげで羽音をたてる
虫の一匹一匹にいたるまで
すべては
わたしたちの遠い記憶のなかで
神聖に輝くもの。

わたしの体に 血がめぐるように
木々のなかを 樹液が流れている。
わたしは この大地の一部で
大地は わたし自身なのだ。

香たつ花は わたしたちの姉妹。
熊や 鹿や 大鷲は
わたしたちの兄弟。
岩山のけわしさも
草原のみずみずしさも
小馬の体のぬくもりも
すべて おなじひとつの家族のもの。

川を流れるまぶしい水は
ただの水ではない。
それは 祖父の
そのまた祖父たちの血。
小川のせせらぎは 祖母の
そのまた祖母たちの声。
湖の水面にゆれる ほのかな影は
わたしたちの 遠い思い出を語る。

川は わたしたちの兄弟。
渇きをいやし カヌーを運び
子どもたちに
惜しげもなく食べ物をあたえる。
だから 白い人よ
どうか あなたの兄弟にするように惜しげもなく食べ物をあたえる。川に やさしくしてほしい。

空気は すばらしいもの。
それは すべての生き物の命を支え
その命に 魂を吹きこむ。
生まれたばかりのわたしに
はじめての息を
あたえてくれた風は
死んでゆくわたしの
最後の吐息を うけいれる風。

(中略)

あらゆるものが つながっている。
わたしたちが
この命の織り物を織ったのではない。
わたしたちは そのなかの
一本の糸にすぎないのだ。

生まれたばかりの赤ん坊が
母親の胸の鼓動を したうように
わたしたちは この大地をしたっている。
もし わたしたちが どうしても
ここを立ち去らなければ
ならないのだとしたら
どうか 白い人よ
わたしたちが 大切にしたように
この大地を 大切にしてほしい。
美しい大地の思い出を
受けとったときのままの姿で
こころに 刻みつけておいてほしい。
そして あなたの子どもの
そのまた 子どもたちのために
この大地を守りつづけ
わたしたちが愛したように
愛してほしい。 いつまでも。

どうか いつまでも。

『父は空 母は大地 インディアンからの手紙 FATHER SKY, MOTHER EARTH』(パロル舎)より
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鵷樹(えんじゅ)

陰陽道家|陰陽五行カウンセラー/薬膳漢方マイスター/心理カウンセラー|陰陽五行思想を根幹としながら、近代と古代、科学と非科学など、あらゆる角度から物事を捉える陰陽道家です。